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独り言

戦後処理の「知的欺瞞」はぎ取れ:長谷川三千子

「勝てば官軍、敗ければ賊軍」誰もがおなじみの古い格言ですが、これはいまなお真理である。

勝った者は、自分たちの「歴史認識」を掲げる権利をうる。それに不満があるなら次に勝てばよい。

だからすぐにも戦争をせよ、などと言っているのではありません。

それは「経済、産業、技術上の優位の維持、さらには対外広報・文化・芸術・スポーツなどを通じた

対外影響力の確保という意味の『競争』を含む」のだと述べて、現在の安倍晋三政権が推し進めている

「平成版『富国強兵』路線」は、そうした総合的な「勝ち」を目指すものであり、

焦って〈歴史認識合戦〉などする必要はないのだ、と説いておられます。

まことにもっともな見解といえるでしょう。  

ただし問題は、それがいかに途方もなく難しいものであるか、ということなのです。  

 

まず言うまでもなく、次に勝つための一番の柱となるのは軍事力であって、

仮に世界最強の軍事力を持つ国になれば、実際に戦争をしなくても実質的に「勝つ」ことが可能となる、

とさえ言えるわけですが、戦勝国が敗戦国にそんなことを許すはずがありません。

わが国の憲法9条は、まさにそれを妨げるために占領者が与えたものであり、

いまも日本はかつての戦勝国である米国に守ってもらって生き延びているのが現状です。

最も肝心の軍事力という点で、わが国は「次に勝つ」どころのレベルではありません。

ならば経済という分野ではどうでしょうか。

 

かつて日本が経済において「独り勝ち」と呼ばれるような好成績を挙げていた時期がありました。

しかし、その時、それを本当の「勝ち」につなげて、われわれ日本人が次の世紀の

世界のあるべき形を自ら設計すべきだ、などと主張した人間がどれだけいたか? 

むしろそんな人が出てくるたびに、まわりの人たちは「そんな思い上がったことを言うものじゃない」

と必死で押さえ込んでいたのではなかったでしょうか?  

 

事実、米国の立場になってみれば、自分たちが守ってやっている国が自分たちの富を存分に吸い上げて

経済大国となり、それを鼻にかけて俺様づらをするなど、許せることではありません。

経済において「次に勝つ」などということは初めから不可能だったのです。  

さらに対外広報ということになれば、わが国にはあらかじめ敗戦国としての地位にふさわしい広報しか

許されていないという状況にある。これは昨今、イヤというほど思い知らされたところです。  

 

ならばわれわれは未来永劫「賊軍」の汚名を背負ったまま生きなければならないのでしょうか?

このような窮地に立たされたときに有効なのは、われわれを窮地に追い込んでいる、

その考え方の枠組み自体を明るみに出し、検分する、ということです。

ここでもそれを実践してみましょう。  

実は、いまわが国を悩ませている〈敗戦国イコール戦争犯罪国〉という図式は、昔ながらの

「勝てば官軍」とは次元の異なるものなのです。

この図式は今から百年足らず前、第一次大戦の戦後処理において初めて登場してきたものなのですが、

それは次のような論理で成り立っていました。  

 

よく知られている通り、第一次大戦は、どうしてこんな大戦争になってしまったのか、

歴史学者も首をひねっている戦争です。

どこか一国のせいで起こったような戦争ではありません。

ところが、戦勝国の英仏両国は、経済が疲弊していて莫大な賠償金を欲していました。

そこで、歴史上にも例しのない、自軍の戦費一切を支払わせる「全額賠償」を要求します。

そして、その根拠として、敗戦国ドイツの侵略がこの戦争の原因だ、

戦争責任はすべてドイツにあるのだ、と主張する。

これがベルサイユ条約のいわゆる「戦争責任条項」として確定されるのです。  

これはもはや「勝てば官軍」といった無邪気な自己主張ではありません。

当時の日米両国はこの途方もない不公正と欺瞞に反対を唱えたのですが、

英仏に押し切られてしまいます。

そして、この不公正な図式は、第二次大戦の戦後処理において、また繰り返されることになるのです。

われわれは単に敗戦国として、このような不公正に異議を唱えているのではありません。

これは人類史上の汚点であるばかりではなく、21世紀が引きずってはならぬ前世紀の遺物システムだ、

というのが重要な点なのです。

これは世界全体に根本的な知的欺瞞を強いるものであり、放置すれば、自らの不法な要求を

「力」に任せて通そうとする国を防ぐことができなくなってしまうのです。

 

〈歴史認識合戦〉をする前にやるべきことは、世界の知的欺瞞のベールをはぎ取ることでしょう。

ーーー

 

 なるほど。正論を言っている。

でも、、、「世界の知的欺瞞のベールをはぎ取る」にも

このベールのおかげで国益になっている国は、ベールを脱ぎたくはないだろう。。。

 

国益と国益がぶつかっている。戦勝国が「譲る」しか方法はない。

果たして、植民地支配を推薦し「力」を信じる覇権国家が「譲る」ものなのか?

これらの国々は今のままの方が都合が良いから、国益を損なうことはしないだろうな。。。