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独り言

【正論】防衛大学校教授:村井友秀

国際関係において敵とは国益を害する国であり、

味方とは国益に資する国、または敵の敵である。

国家は、国民、領土、主権から成り立っており、これらの3要素を害する国が深刻な敵である。

現代のアジアでモンゴルやベトナムやインドは日本に友好的な態度を取ることが多い。

日本人が特別に好かれているわけではない。

ただ、これらの国は中国に侵略された歴史を忘れていない。

中国は敵であり、敵の敵は味方なのである。

日本がこれらの国で厚遇されるのは、日本が中国に対抗できる国であると見られているからである。したがって、日中関係が親密になれば、これらの国の日本への信頼感は低下するであろう。  

20世紀初期のトルコやポーランドでは日本の人気は高かった。

当時、両国の敵はロシアであり、日本は日露戦争の勝者だったからである。

 

ただし、「国家には永遠の友も永遠の敵も存在しない。存在するのは永遠の国益だけである」(パーマストン英首相)ということも国際関係の原則である。  

 

それでは日本の国益を侵害している国はどの国であろうか。  

脅威は能力と意志の掛け算である。

日本の国民、領土、主権を侵害する最大の軍事的能力を持っているのは米国であろう。

次いで、ロシア、中国、北朝鮮が挙げられる。

 

 次に、日本の国益を侵害する意志を見ると、

米国は日本の同盟国であり、日本を攻撃する意志はゼロであろう。

したがって、能力と意志を掛けると米国の脅威はゼロである。

ロシアは日本の領土を奪い、武力で不法状態を維持しようとしている。

ロシアの意志と能力を掛けると脅威は存在する。  

 

中国は日本が実効統治している尖閣諸島を武力で奪い、現状を変更しようとしている。

日本の領土を積極的に侵害しようとしているのである。

中国の能力と意志を掛けると脅威は明確に存在する。

北朝鮮は日本人を拉致し、かけ替えのない国益である国民の生命を侵害している。

北朝鮮の能力と意志を掛ければ脅威は存在する。

韓国は日本の領土である竹島を不法占拠し、武力を使って現状を維持しようとしている。

韓国も能力と意志の掛け算はプラスである。  

 

以上、能力と意志を掛け算すると中国の脅威が最大になる。  

 

他方、米露韓の3カ国は民主主義国である。

一般的に民主主義国は戦争をやりにくい構造になっている。

戦争は奇襲で始まる場合が多い。

しかし、民主主義国は政策決定過程の透明性が高く、敵を奇襲することが難しい。

また、民主主義国は暴力による威嚇ではなく国民を説得することによって、政権を維持している。対外関係でも同様の行動を取る傾向があり、話し合いを優先し、戦争を選択する可能性は低いといわれている。だが、中国と北朝鮮は独裁国家であり、戦争に対する民主主義のブレーキが効かない国家である。

 

文民統制も戦争に走る軍を政治が抑えるシステムである。

米露韓の3カ国では文民統制が機能している。

それに対して、北朝鮮は軍が最優先される「先軍政治」の国であり、中国も「鉄砲から生まれた」共産党と軍が一体化した兵営国家であり、文民統制は存在しない。

 

以上の条件を勘案すると、現在の日本にとって最大の脅威は中国による領土の侵略である。

 

中国の侵略に日本はどのように対応すべきか。

尖閣諸島を日本から奪おうとする中国の行為は、日本の死活的に重要な国益を侵害するだけではなく、国連憲章を否定する行為でもある。国連憲章第1章は「すべての加盟国は武力による威嚇または武力の行使を慎まなければならない」とうたう。  

したがって、武力による威嚇と武力行使で日本から尖閣諸島を奪おうとする中国に抵抗する日本の行動は、国連憲章に則(のっと)った正義の行動である。尖閣諸島をめぐる日中の動きは、両国の国益の衝突という次元にとどまらない。国際社会の正義の問題なのである。  

 

現在、日本では、中国による世論戦、心理戦や経済的圧力の効果もあって、中国に妥協すべきだとの意見も強まっている。しかし、その中国の指導者、毛沢東が「敵と妥協し、領土や主権を少し犠牲にすれば、敵の攻撃を止めることができるとする考えは幻想に過ぎない」(持久戦論)と述べていることを肝に銘ずべきだろう。

 

尖閣諸島を守る日本の行動は、力で要求を押し通そうとする強者に対する正義の戦いという面がある。日本が屈服すれば、強者に抵抗する日本に期待していたアジアの弱者は失望し、日本のアジアに対する影響力(ソフトパワー)は消滅する。日本が強者に対する抵抗を放棄すれば、アジアで弱者が安心して平和に暮らす環境もなくなるであろう。

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時代は繰り返されている。

今の時代には、大規模な戦争にはならないだろうけどね。

ガンバレ日本!