経済メディアは「オオカミ少年」そのもの
「金融革命」と英フィナンシャル・タイムズ紙が評すほどの黒田日銀総裁による
大胆な金融緩和政策が打ち出された。これで「アベノミクス」は本格始動した。
しかし、危惧するのは、「主流派」と称する経済ジャーナリズムの動向である。
かれらはこれまでデフレを容認してきた論調の重大な誤りについて、何の反省もしないままだ。
かれらは、いったんアベノミクスに少しでもマイナス材料が出れば、
それみたことか、と一斉に吠え出すだろう。
こうしたメディアの経済論調に共通するのは、以下の3点である。
まず、「15年デフレ」が日本の国と国民に対してもたらしてきた苦難に関する認識の欠如。
2番目は、デフレから抜け出すための政策についての追求力の薄弱さ。
3番目はデフレを放置または助長する財務省・日銀の「御用メディア」ぶりである。
大手全国紙論調の形成過程はあいまいで、トップと編集局・論説委員会幹部の間で
何らかの方向性がフワッと決まり、デスクや現場記者、論説委員たちがそれとなく
「空気」を読んで記事を書き、編集していくムラ社会型である。
そんな新聞社は経済情報を握る機構にいとも簡単に操縦されてしまい、
新聞社の生命線とも言うべき論調がゆがんでしまう。
当事者である財務省や日銀は「無謬」を鉄則とする集団である。
デフレが「悪」と認めるなら、それを放置したり、促進してきた政策の誤りを突かれる。
むしろ、従来の政策を正当化するためにも、デフレから目を背ける。
そして、自身が打ち出す政策はデフレと無関係だとする論理を構築し、組織防衛に走る。
財務官僚は「デフレ下の増税」がデフレ不況を招くのではないか、という問いから逃げ、
「財政再建」の重要性ばかりを強調してきた。
ひたすら消費増税の効用を説き、自らの権限拡大にいそしむ。
そして、安倍晋三首相が消費税引き上げに慎重と知るや、連日のように財務省幹部が官邸におしかけ、
「予定通り増税しないと、長期金利が暴騰する」と脅しまくるのである。
朝日新聞の3月25日の「国の借金-新たな安全神話に陥るな」という社説では、
明治時代を例に引き、「今の政治家に、借金を恐れまじめに償還を考えた明治の為政者の覚悟は
あるだろうか」と説き、日銀による国債の大量購入に伴う「制御不能のインフレ」や「財政規律」の
欠如による日本売りに警鐘を鳴らし、国債の「暴落はないと高をくくるのは
原発の事故リスクを無視してきたことと同じ」と断じている。
世界最大の債権国の現代日本を外国からの借金に依存した明治時代と比較したり
福島原発事故と同列視するのは、経済学上の知見からほど遠い。
何よりも、脱デフレのための金融と財政政策がやっと始まる段階で、
悪性インフレや長期金利の高騰が来るぞ、と脅すのはまるで「オオカミ少年」そのものである。
かれらをチェックできるのは読者しかない。
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ここでも結局「自立」なのかもしれない。報道機関や行政機関からの自立。
自分(個人)で情報を集め熟考し、方向性を決める。そして、自己責任。
何が正しくて、何が間違っているのか。
その時々で正しい判断が出来るように、私自身の判断力をもっと磨かないといけない。
オオカミ少年に騙されないように。